ポイント経済圏20年戦争――100兆円ビジネスを巡る5大陣営の死闘(名古屋和希:著、ダイヤモンド社)を読みました。
楽天ポイントやdポイント、paypayポイント、Vポイントなどは身近に接しているだけに興味を持って読めました。
タイトルは「5大陣営の死闘」となっていますが、内容は「Tポイントの誕生から成長、衰退、消滅」がメインのストーリーになっています。
主役となるのは、笠原和彦氏。
日本初の共通ポイントである Tポイント 生みの親であり、楽天に移ってからは古巣のTポイントの牙城を次々に崩していき、現在の楽天ポイントの隆盛を築き上げました。
1.Tポイントが衰退していった原因について
Tポイントは日本初の共通ポイントとして巨大な加盟店網を作り上げましたが、後発の楽天やdポイントに食われて加盟店を失っていきます。
その要因としては
Tポイントは、加盟店への客層データの提供が不十分であった、その割には集客効果がさほどでもなかったことが加盟店の不満を招いたことが大きいようです。
しかし、本を読む限りでは、笠原氏の上司であったTSUTAYA及びCCC創業者の増田宗昭氏の経営者としての資質にもあったように思われました。
Tポイントに最後まで反対していたくせに、Tポイントが軌道に乗ると自分がイニシアティブを取りたくて笠原氏を閑職に追いやった結果、笠原氏やその部下たちの人材の楽天への流出を招きます。
しかも部下の進めていた話にあれこれ後になって無用な口を出すのが常態になっていたようです。
私は増田氏がTポイントが状況に応じて変化できなかった原因になっていると感じました。
2.意外に感情で動いている
笠原氏が楽天ポイントへの加盟を各社に呼びかけたとき、最初は苦労します。ビジネス的には圧倒的に有利でも、Tポイントとの長年の関係性であったり、増田氏とゴルフ仲間であったりすることでなかなか受け入れてもらえなかったようです。
本書のプロローグには、楽天ポイントがECだけでなくリアルの世界に乗り出していくのに三木谷氏が慎重だったのは、増田氏と戦いたくないという気持ちがあったためではないかとあります。
この本には、このように経営上の判断に損得より感情が優先している場面がいくつも描かれています。
「ビジネスを動かしているのは結局のところ、人であり、人の感情なのだ」P.258エピローグより
3.今後について 思うこと
この本は業界の歴史を知るとともに、多少なりともポイ活している人には自分のポイ活の参考にもなりそうです。
Tポイントは新生Vポイントとなりましたが、苦戦しています。加盟店離れは止まらず、人材の流出も続いています。
Pontaポイントも停滞しています。
今は楽天とdポイントの2強時代といって良いです。
とくに楽天は加盟店も多く、他のポイント経済圏に比べてバランスが取れていて穴がないように見えます。
(dポイントはECが弱いので、Amazonと提携したが、内容は不十分)
では楽天経済圏でオトクな生活が得られるかというと、そんなことはないと私は思います。
その理由は、楽天の企業風土や文化にあります。
例えば、価格.comで楽天カードのレビューを見ていくと驚くことばかりです。
- 意味不明にロックがかかって使えないことが多々ある
- 不正使用されても難癖をつけられて金額を請求される
- 連絡はチャットか、繋がらないうえに高額の通信料がかかる0570電話しかない
- 海外では使えない、などなど
私はまったく別の銀行系カードを30年以上使用していますが、カード決済が通らなかったことは一度もありません。
不正利用されたことは3度ありますが、いずれも請求前にカード会社から電話連絡が来て、支払いを止めてくれました。もちろん海外でも問題なく使えます。
楽天カードは、付与されるポイントは高いかもしれませんが、それにつられてこういった会社のクレジットカードを利用するのは危ないように思います。
これは楽天カードだけの話ではなく、楽天全体の企業風土と文化が関わっていると感じます。
【PR】
ビジネスのモデルケースとしてたいへん勉強になります。